いよいよ植樹へ
- nikemaister
- 3月27日
- 読了時間: 4分

日増しに暖かくなり、つい先日まで雪化粧をまとっていた坪内一帯の山々にも、春の息吹が満ちてまいりました。
さて、樹木の伐採、地ごしらえを経て、いよいよ山に新たな命を吹き込む「植樹」を行います。 我々の行う植樹は、単に市販の苗を植えるのではありません。天川の地に自生し、その土地の遺伝子を持つ「実生苗」を採取・育成し、再び元の山へ植え戻すという循環(サイクル)を大切にしています。 →我々の植樹する苗については下記ページからご覧いただけます。

今回も畑で手塩にかけて育てた実生苗を掘り取り、山へ運び入れました。 300本強の苗を、樹がしっかりと大地に根を張れるよう、草木が芽吹く前の冬の間に植えねばなりません。根気と労力、そして時間との戦いとなる作業でした。

また、今回の現場は前回植樹祭を行った場所とは違い、見渡す限りの急勾配です。危険を伴う作業となるため、残念ながら一般の方からの募集は断念せざるを得ませんでした。
そのような厳しい状況の中、以前、船岡の杜の展望台(舟)を設計してくださった坂本氏より、心強いお申し出をいただきました。「天河斎庭の取り組みに、引き続き協力したい」と、志を共にするお仲間を連れて駆けつけてくださり、我々と共にこの険しい斜面での植樹を完遂してくださいました。
「作業前は単純なことだと思っていたが、実際に行うとこれほど神経を使うとは」 参加された方々が、作業後にそう口にされるほど、繊細さが求められる現場でした。
実生苗をこの畑に移して2〜3年。 地上部の成長はもちろん、見えない土の中でも根が太く、深く育っています。将来の大木となるその根を一本たりとも傷つけぬよう、掘り起こす作業には細心の注意と時間を要しました。
さらに、深く根を張った苗を土から引き抜くには、相当な力が必要です。 一人だけで行うのは難しいため、二人掛かりでペアを組み、「せーの」と呼吸を合わせ、力を込めて一本一本丁寧に作業を行いました。

抜き取った苗は、根っこが乾燥しないように気をつけながら、今度は山へと持ち運びます。
1メートル近くまで大きく育った苗を、10本単位で袋にまとめて運びます。 その重量は相当なものですが、さらに今回は、その荷物を背負って急斜面を登らなければなりません。それは、強靭な足腰と精神力が求められる過酷な行程でした。
機械の入れない場所で、まさにマンパワーだけが頼りです。それだけに、この絶好のタイミングで手を差し伸べていただけたことは、感謝してもしきれません。

運搬を終えた後は、西岡の指導のもと植え付けに入ります。 木の幹の向きや根の張り具合など、苗木それぞれの特性を見極めながら、一本一本丁寧に山へ植樹しました。

足場が悪く、立っていることさえ精一杯な場所で、大きな根を受け止めるための深い穴を掘り進める作業です。

皆様は普段、パソコンに向かうデスクワークが多いとお聞きしており、この急斜面での重労働は、我々が想像する以上に過酷だったはずです。 それにも関わらず、誰一人として弱音を吐かず、ひたむきに目の前の土と木に向き合い続けてくださいました。

朝一番に始まった作業も、気づけば陽が西へ傾きかけていました。
効率化が求められる現代、機械に頼りたい場面もありますが、この険しい地形では叶いません。 しかし、我々が行っているのは単なる作業ではなく、「樹木の命を移し替え、山に新たな生命を吹き込む」という営みです。だからこそ、機械ではなく、人の温かい手で、一つひとつ心をこめて植えることにこそ意味があるのです。

今回は皆様の多大なるご協力のおかげで、普段よりも格段に早いペースで、数多くの苗を山に還すことができました。

一日がかりで、ようやく斜面全体の1/3ほどを植え終えることができました。 完成まではまだ作業が続きますが、こうして温かいお力添えをいただけたことは、我々にとって大きな励みとなりました。深く感謝いたします。



































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