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鹿と人間と

こんばんは。

温かな応援メッセージに、そしてご支援を引き続き賜り誠にありがとうございます!残り15日をきり、225名の方々からご支援をいただき、こうして取り組ませていただけることに感謝の気持ちでいっぱいです。

さて、今日は我々がこれから取組むうえで考えていかなければならない「鹿」対策についてご紹介させていただきたいと思います。

|| 植樹する苗木を守るため

今回のプロジェクトでは、植樹をする前に防鹿柵の設置を2022年2月末~3月初旬に行う予定でおります。(そして、ご支援いただきました支援金の一部はこの防鹿柵の購入費用にもあてさせていただきます)



プロジェクトページ内にも記載させていただきましたが、本来ならばこのような柵も必要ないのですが、近年獣害が厳しく、せっかく苗を植えてもすべてが食べられてしまう状況で木々を守るための不可欠の対策となります。



▲これは坪内谷。ここも2011年の紀伊半島豪雨災害時に土砂崩れ(深層崩壊)がおきました。現在も地盤改良工事が行われていますが、この河川敷にも代表の西岡が広葉樹を植樹しました。



▲これは去年の夏の一コマ。植えた苗木がきちんと育つようにこまめに水やりもしています。そして、苗木の周りにネットをまいておりますが、これも鹿対策用になります。




▲せっかく丹念に世話をかけて育てていても、植栽したばかりのやわらかい苗や、まだ背の低い成長途上の木の枝葉などを食べてしまうので、木の成長を阻害してしまい、場合によっては枯死に至ることもあります。



▲これは、枝の先を全部食べられてしまいました。



▲約25本ほど植えましたが、その半分弱は食べられてしまっています



|| 鹿が悪いのか?

せっかく植えて育てているのに食べられて枯れてしまう苗木をみると「鹿め!!」と思う感情がでるのでしょうか。

いえいえ・・・そうはなりません。 

西岡も「あぁまた食べられてしまったか。うまいんかなぁ」と言い、そこに鹿に対して怒りはなくむしろ”しかたがない”と。

それは、鹿も荒らしにくるわけではなく、鹿もまた生きるため、食をえるためにはしかたがないことなのです。とはいえども、このままではいいのかというと決してそうではありません。我々人間にとっても、鹿たちにとっても、いきつつくところ地球にとっても。

|| 「獣害」といわれてしまう理由

我々も"獣害"のために防鹿柵を設置をするとプロジェクトページ内にも記載しておりますが、本来であればこのような言葉は使いたくないのは本音です。

しかしながら、前述したとおりせっかく植樹した苗木も食べられてしまうということは元より、下草も食べつくされてしまうため、土や岩もむきだしになり、地盤が弱くなり、集中豪雨に見舞われてしまうと、土砂崩れがおきるという被害が日本全国の山林で実際におきています。



▲主要な野生鳥獣による森林被害面積(令和元年度)【参照元:林野庁HPより】



そして、原生林である弥山一帯の山守でもあった代表の西岡は弥山でも被害は顕著にでているといいます。



▲国指定天然記念物のオオヤマレンゲは弥山の山頂付近に生息していますが、このオオヤマレンゲも鹿などに食べられてしまい絶滅寸前の手前まで。平成10年度より環境省も管轄にはいり山頂にて保護活動をしています。



▲高地にしかなかなか育たない亜高山帯針葉樹林を構成する「シラビソ」の群生林も年々減少しているのを目の当たりにしてきた、と。根の部分や枝などを鹿やねずみ、うさぎなどが食べていき、次の苗が育っていない今、この先5,60年もするとこれらもこの山から消えてしまうかもしれないと危惧しています。



|| 鹿が増える背景

そもそも、鹿は草食動物。山々の樹木の下草や越冬期には笹の葉を食べていたといいます。しかしながら、拡大造林で人工林が増えていくなか、間伐などの手入れをこまめに行わないと、樹下に光が届きにくく、林の中が暗くなり、他の植生が育たなくなってしまうため、鹿たちの食べる草がなくなってきています。



▲実際の現在の船岡山の斜面です。太陽が明るく照らしている昼間でも、間伐が行われていないため、薄暗いです。そして、我々が「どうして広葉樹を植樹するのか」の中にも記載しております。

そのため、結果的に、本来は鹿たちにとっても餌にはならないであろう針葉樹の桧や杉などの樹皮を食べるようになってしまっているという要因があるのです。

一方で、下図グラフにあるように年々と鹿の数が増えている背景もあります。




(データ引用元:環境省自然環境局 「全国のニホンジカ及びイノシシの個体数推定等の結果について」より)


この増加の背景には

  • 温暖化などの影響で積雪が減ったこと  →かつては厳しい寒い冬を乗り越えられないシカもいましたが、雪が少ないと広範囲を歩き回ってエサを求めることができるようになります。結果として、餓死するシカが減ってシカの生存率が上がったといわれます。

  • ニホンオオカミの絶滅 →日本ではかつてニホンオオカミが生息していましたが、明治時代に絶滅してしまったため、天敵であるニホンオオカミが絶滅したことも原因の一つに。

  • 狩猟者の減少

ということが考えられています。

|| 共生していくためにも

今回のプロジェクトでも植樹する苗木を守るために防鹿柵を設置していきますが、こうして考えると柵を設置したから「はい、終わり」という単純な問題では決してありません。

様々な要因が絡み合い、結果的に「人間VS鹿」のような対立構造にも一見見受けられてしまうこともありますが、そのような捉え方では一向に解決できないようにも感じますし、人間が勝手により複雑化しているようにも。

「自然は先に2,30年も前からサインをだしていたんだ。でも、人間がようやく気づくときにはもう遅いのかもしれない」

「人間の諸行である。動物たちへの贖罪をしていかないといけない。きっと動物たちも美味しい木の実を食べたい!昔の森に戻してくれ!とそんな心の叫びがきこえてならない」

と、代表の西岡と井頭がそれぞれ語ってくれました。

今回ご紹介させていただいた鹿の繁殖増加等による被害は、ここ天河だけの問題ではなく日本全国の山林でおきています。これから永きにわたり続けていく我々の活動も、解決していける道しるべを少しでも早くみつけて取組んでいかなければいけない、そう強く思うしだいです。

~今日の一枚~


▲天河の冬は凍てつく寒さで十分厳しいですが、西岡が子供の頃はこの川も凍って、川の上を歩いていたそうです。 今となっては想像が難しいほど・・・。 そして、この坪内の里ないにも野兎をよくみたそうで。豊かさや便利さの追及との引き替えとして失っているのは、まだ目に見えていないだけでこれからもっとでてくるのでしょうか。いろいろと考えさせれます。


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